ワすと、向うから一人《いちにん》の旅人、物をも云わず摺《す》れ違いました。文治は心にも懸けず遣《や》り過しましたが、二三丁まいりますと、一人《いちにん》の旅人が素《す》ッ裸体《ぱだか》で杉の樹《き》に縛《くゝ》り付けられ、身体は凍えて口もきけず、がた/″\震え上って居《お》る体《てい》を見るより、舁夫は、
「やア大変だ、旦那/\」
文治もこれを認めまして、
文「これ/\舁夫、その駕籠は二三|間《げん》先へ置けよ」
舁「成程、女中衆にこんな物を見せては」
と云いながら五六|間《けん》先へ駕籠を下《おろ》しまして、一人《いちにん》が附添い、一人《いちにん》が帰って来まして手を合せ、
舁「旦那様、何《ど》うぞ助けてやって下さいまし」
文「山賊の仕業《しわざ》と見えるな、何しろ恐ろしい奴もあるもんだな、これ舁夫、駕籠は何《ど》うした」
舁[#「舁」は底本では「文」と誤記]「へえ、直《じ》き其処《そこ》へ下しまして棒組|一人《ひとり》を附けて置きました、御安心なせえまし」
文「そうか」
と文治は手早く差添《さしぞえ》を抜き、その縄を切解《きりほど》きまして、
文[#「文」は
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