調法をいたし、嘸《さぞ》御立腹ではございましょうが……」
甲「いや貴方のおいでまでの事はないが、お出《い》で下されば千万有難いことで、何とも恐入りました、へゝゝ、ま一盃《ひとつ》召上れ」
 と眼を細くしてお竹を見詰めて居りますから、一人が気をもみ、
乙「何だえ、仕方がないな、貴公ぐらい女を見ると惚《のろ》い人間はないよ、女を見ると勘弁なり難い事でも直《すぐ》にでれ/\と許してしまう、それも宜《よ》いが、後《あと》の勘定を何うする、勘定をよ、前に親娘連《おやこづ》れで昇《あが》った立派な侍が二階に居《い》るじゃアないか、然《しか》るを女を詫によこすてえ次第があるかえ、其の廉《かど》を押したら宜かろう、勘定を何うするよ」
甲「うん成程、気が付かんだったが、前《さき》に昇《あが》っていたか、至極どうも御尤《ごもっと》もだから然《そ》う致そうじゃアないか」
丙「何だか分らんことを云ってる、兎に角御主人がお詫に来たから、それで宜《い》いじゃアないか、斯様な人ざかしい処で兎や斯う云えば貴公の恥お嬢様の辱《はじ》になるから、甚だ見苦しいが拙宅へお招ぎ申して、一口差上げ、にっこり笑ってお別れにしたら宜
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