という事があるかえ」
喜「はい、田舎者で何も心得ませんから」
織「何も心得んとて、先方で立腹するところは尤《もっと》もじゃアないか、喰物《くいもの》の中へ泥草履を投入れゝば、誰だって立腹致すのは当然《あたりまえ》のことじゃ、それから何う致した」
喜「へえ、三人ながら意地の悪い奴が揃ってゝ、家来の不調法は主人の不調法だから、余所目《よそめ》に見て二階に居ることはねえ、此処《これ》へまいり、成り代って詫をしたら堪忍してくれると云いまして、お包を取上げましたから、渡すめえと確《しっ》かり押えると、あんた傍に居た奴が私《わし》の頭を叩いて、無理やりに引奪《ひったく》られましたから、大切な物でも入《へえ》って居《お》ろうかと心配して居ります」
織「何も入って居らん空風呂敷《からぶろしき》ではあるが、不調法をして詫をせずに置く訳にもいかん、手前の事から己が出ると、拙者は粂野美作守家来渡邊織江と申す者でござると、斯う姓名を明かさんければならん、己の名前は兎も角も御主人の名を汚《けが》す事になっちゃア誠に済まん訳じゃアないか、手前は長く奉公しても山出しの習慣《しぐせ》が脱《ぬ》けん男だ、誠に困ったもん
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