ら》いをしやアがって」
清「ずっとお料理を取換え、お燗の宜《よ》い処を召上り、お心持を直してお帰りを願います」
 それより他に致し方がないので、酒肴《さけさかな》を出しまして、
清「是は手前の方の不調法から出来ました事でげすから、其のお代は戴きません、皆様へ御馳走の心得で」
乙「黙れ、不礼至極なことを云うな、御馳走なんて、汝《てまえ》に酒肴《しゅこう》を振舞って貰いたいから立腹致したと心得て居《お》るか、振舞って貰いたい下心で怒《おこ》ってる次第じゃアなえぞ」
清「いえその最初《はじまり》は上げて置いて、あとで代を戴きます」
甲「汝《てまえ》では分らんもっと分る者を遣《よこ》せ」
 二階では織江殿も心配して居りますところへ、喜六が泣きながら昇《あが》ってまいりました。

        十二

 喜六は力無げに二階へ上《あが》ってまいり、
喜「はい御免下せえまし」
織「おゝ喜六か、是へ来い/\」
喜「はい、誠に何ともはア申訳のねえ事をしました、悪い奴にお包を奪《と》られて」
織「困ったものじゃアないか、何故《なぜ》草履を懐へ入れて二階へ上ったのだよ、草履を懐へ入れて上へ昇《あが》るなど
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