せいじ》どん」
清「そら、己の方へ来た」
下婢「取っても附けないよ、変な奴だよ」
清「女でも宜《よ》いのに、仕様がないね」
 と若い者が悪浪人《わるろうにん》の前へ来て、額へ手を当て、
若「えへゝゝ」
甲「変な奴が出て来た、手前は何だ」
若「今日《こんにち》は生憎《あいにく》主人が下町までまいって居りませんから、手前は帳場に坐っている番頭で、御立腹の処は重々|御尤《ごもっとも》さまでございますが、何分にもへえ、全体お前さんが逆らっては悪い、此方《こなた》で御立腹なさるのは御尤もで仕方がない謝まんなさい、えへ……誠に此の通り何も御存じないお方で相済みませんが…」
甲「只相済まん/\と云って何う致すのだ」
若「どうか旦那さま」
甲「うん何だと、何が何うしたと、此椀《これ》を何う致すよ、只勘弁しろたって、泥ぽっけにした物が喰えるかい」
清「左様なら旦那さま、斯様致しましょう、お料理を取換えましょう、ちょいとお芳《よし》どん、是をずっと下げて、何か乙《おつ》な、ちょいとさっぱりとしたお刺身と云ったような[#「ような」は底本では「なうな」]もので、えへゝゝ」
甲「忌《いや》な奴だな、空笑《そらわ
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