野郎だ……」
 と尚《な》お事が大きくなって、見ちゃア居られませんから茶屋の女中が、
下婢「鎌《かま》どんを遣《や》っておくれな」
鎌「なに斯ういう事は矢張《やッぱ》り女が宜《い》いよ」
下婢「其様なことを云わずに往っておくれよ」
鎌「客種《きゃくだね》が悪い筋だ、何《なん》かごたつこうとして居る機《はず》みだから、どうも仕様がない」
 下婢《おんな》どもがそれへ参り、
下婢「ね、あなた方」
甲「何だ、何だ手前は」
下婢「貴方《あなた》申しお供さん、お気を附けなさらないといけませんよ、貴方ね、此方《こちら》は下足番の有るのを御存じないものですから、履物《はきもの》を懐へ入れて梯子段を昇《あが》ろうとした処を、つい酔っていらっしゃるもんですから、不調法で落ちたのでしょう、実にお気の毒さま、何卒《どうぞ》ね、ま斯ういうお花見時分で、お客さまが立込んで居りますから、御機嫌を直していらっしゃいよ、何ですよう、ちょいと貴方ア」
甲「なんだ不礼至極な奴め、愛敬が有るとか器量が好《よ》いとか云うならまだしも、手前の面を見ろい、手前じゃア分らんから分る人間を出せ」
下婢「誠にどうも、あのちょいと清次《
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