って濃くなりましたから上り悪《にく》うございましょう、お忌《いや》ならば半分召上れ、あとの滓《おり》のあります所は私が戴きますから」
母「此の娘《こ》は詰らんことを云う、達者な者がお薬を服《た》べて何うする、私は幾ら浴《あび》るほどお薬を飲んでも効験《きゝめ》がないからいけないよ、私はもう死ぬと諦らめましたから、お前|其様《そんな》に薬を勧めておくれでない」
千「あら、またお母さまはあんな事ばかり云っていらっしゃるんですもの、御病気は時節が来ないと癒りませんから、私は一生懸命に神さまへお願掛《がんが》けをして居ますが、あなた世間には七十八十まで生きます者は幾許《いくら》も有りますよ」
母「いゝえ私は若い時分に苦労をしたものだからの、それが矢張《やっぱ》り身体に中《あた》っているのだよ」
千「あの爺やが参りましたよ」
母「おゝ丹治、此方《こっち》へ入っておくれ」
丹「はい御免なせえまし、何うでござえますな、些《ちっ》とは胸の晴《はれ》る事もござえますかね、お嬢さんも心配しておいでなさいますから、能《よ》くお考えなせえまし、併《しか》しま旧《もと》が旧で、あゝいう生活《くらし》をなすった方
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