け》えな、一箱三拾両なんて魂消《たまげ》た、怖ろしい高え薬を売りたがる奴じゃアねえか」
千「なに売りたがると云う訳ではないが、其のお薬を飲ませればお母さまの御病気が癒ると仰しゃるから、私は其れを買いたいと思うが買えないの」
丹「むゝう三拾両じゃア仕様がねえ、是れが三両ぐらいのことなら大事な御主人の病《やめえ》には換えられねえから、宅《うち》を売ったって其の薬を買って上げたいとは思いますが、三拾両なんてえらい話だ、そんな出来ねえ相談を打《ぶ》たれちゃア困ります、御病人の前で高《でけ》え声じゃア云えねえが、殊《こと》に寄ったら其様《そん》な事を機会《しお》にして他《ほか》へ見せてくんろという事ではないかと思うと、誠に気が痛みやすな」
千「私も実は左様《そう》思っているの、それに就《つ》いて少しお前に相談があるからお母さまへ共々《とも/″\》に願っておくれな、私が其のお薬を買うだけの手当を拵《こしら》えますよ」
丹「拵えるたって無いものは仕様があんめえ」
千「そこが工夫だから、兎も角お母さまの処へ一緒に」
 と枕元の屏風を開け、
千「もしお母様《っかさま》、二番が出来ましたから召上れ、少し詰
前へ 次へ
全470ページ中9ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング