の手を押《つか》めえて考えるのが小一時《こいっとき》もかゝって、余り永いもんだで病人が大儀だから、少し寝かしてくんろてえまで、診るそうです」
千「誠に御親切に診て下さいますけれども、爺や彼の先生の仰しゃるには、朝鮮の人参の入ってるお薬を飲ませないとお母《っか》さまはいけないと仰しゃったよ」

        二

 其の時に丹治は首を前へ出しまして、
丹「へえー何を飲ませます」
千「人参の入ってるお薬を」
丹「何《ど》のくらい飲ませるんで」
千「一箱も飲ませれば宜《よ》いと仰しゃったの」
丹「それなら何も心配は入りません、一箱で一両も二両もする訳のものじゃアございやせん、多寡《たか》の知れた胡蘿蔔《にんじん》ぐらいを」
千「なに胡蘿蔔ではない人参だわね」
丹「人参てえのは何だい」
千「人の形に成って居るような草の根だというが、私は知らないけれども、誠に少ないもので、本邦《こっち》へも余り渡らない物だけれども、其のお薬をお母《っか》さまに服《た》べさせる事もできないんだよ」
丹「何うかして癒らば買って上げたいもんだが、何《ど》の位のものでがす」
千「一箱三拾両だとさ」
丹「そりゃア高《た
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