た。こゝに以前此の家に奉公を致していました丹治《たんじ》と申す老爺《じゞい》がありまして、時々見舞に参ります。
丹「えゝお嬢様、何うでがす今日《こんち》は……」
千「おや爺《じい》やか、まアお上りな、爺や此間《こないだ》は誠に何よりの品を有難うよ」
丹「なに碌なものでもございませんが、少しも早く母《かあ》さまの御病気が御全快になれば宜《よ》いと心配していますが、何うも御様子が宜くねえだね」
千「何うかして少しお気をお晴しなさると宜《い》いが、私はもういけない、所詮死ぬからなんて御自分の気から漸々《だん/″\》御病気を重くなさるのだから困るよ、今朝はお医者様を有難う、早速来て下すったよ」
丹「参りましたかえ、あのお医者さまはえらい人でごぜえまして、何でもはア此の近辺の者で彼《あ》の人に掛って癒《なお》らねえのはねえと云う、宅《うち》も小さくって良いお出入場《でいりば》も無《ね》えようだが、城下から頼まれて、立派なお医者さまが見放した病人を癒した事が幾許《いくら》もありやすので、諸方へ頼まれて往《ゆ》きますが、年い老《と》って居るから診《み》ようが丁寧だてえます、脉《みゃく》を診るのに両方
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