が、急に此様《こん》な片田舎へ来て、私《わし》のような者を頼みに思って、親一人子一人で僅かな畠を持って仕つけもしねえ内職をしたりして斯《こ》うやって入らっしゃるだから、あゝ詰らねえと昔を思って気を落すところから御病気になったものと考えますが、私だって貧乏だから金ずくではお力になれませんが、以前はあなたの処へ奉公した家来だアから、何うかして御病気の癒るように蔭ながら信心をぶって居りますが、お嬢さまの心配は一通りでないから、我慢してお薬を上んなせえまし」
母「有難う、お前の真実は忘れません、他にも以前|勧《つと》めた[#「勧《つと》めた」は「勤《つと》めた」の誤記か]ものは幾許《いくら》もあるが、お前のように末々《すえ/″\》まで力になってくれる人は少ない、私は死んでも厭《いと》いはないけれども、まだ十九《つゞ》や廿歳《はたち》の千代を後《あと》に残して死ぬのはのう……」
丹「あなた、然《そ》う死ぬ死ぬと云わねえが宜うごぜえます、幾ら死ぬたって死なれません、寿命が尽きねえば死ねるもんではねえから、どうも然う意地の悪い事ばかり考えちゃア困りますなア、死ぬまでも薬を」
千「何だよう、死ぬまでも
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