髷《おおたぶさ》の連中《れんじゅう》がそろ/\花見に出る者もあるが、金がないので往《ゆ》かれないのを残念に思いまして、少しばかり散財《ざんざい》を仕ようと、味噌吸物《みそずいもの》に菜のひたし物|香物《こう/\》沢山《だくさん》という酷い誂《あつら》えもので、グビーリ/\と大盃《おおもの》で酒を飲んで居ります。二階では渡邊織江が娘お竹と御飯《ごぜん》が済んで、
織「これ/\女中」
下婢「はい」
織「下に従者《とも》が居《お》るから小包を持って来いと云えば分るから、然《そ》う云ってくれ」
下婢「はい畏《かしこ》まりました」
 とん/\/\と階下《した》へ下りまして、
下婢「あの、お供さん、旦那があの小さい風呂敷包を持って二階へ昇《あが》れと仰しゃいましたよ」
喜「はい畏まりました」
 と喜六と云う六十四才になる爺さんが、よぼ/\して片手に小包を提げ、正直な人ゆえ下足番が有るのに、傍《わき》に置いた主人の雪踏《せった》とお嬢様の雪踏と自分の福草履三足一緒に懐中《ふところ》へ入れたから、飴細工の狸見たようになって、梯子を上《あが》ろうとする時、微酔機嫌《ほろよいきげん》で少し身体が斜《よこ》
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