くれるだ、貰わねえと悪いと云うから、仕方なしに貰うけれども、何でも山盛り呉れるだ、喰物《くいもの》などは切溜《きりだめ》を持ってって脊負《しょ》って来《こ》ねえばなんねえだ、誠にはア有難《ありがて》え事になって、勿体ねえが、他に恩返《おんげえ》しの仕様がねえから、旦那様を大切《でえじ》に思って、不寝《ねず》に奉公する心得だが、貴方《あんた》は今の若さで遊んでいずに、何処かへ奉公でもしたら宜かろう」
大「拙者も然《そ》う思ってる、迚《とて》も国へ往ったっていけんから、何処ぞへ取付こうと思うが、御当家でお羽振の宜《い》いお方は何というお方だね」
權「私《わし》ア其様な事は知んねえ、お国家老の福原數馬《ふくはらかずま》様、寺島兵庫《てらじまひょうご》様、お側御用|神原五郎治《かんばらごろうじ》様とかいう奴があるよ」
大「奴とは酷《ひど》いね」
權「それに此間《こねえだ》ちょっくら聞いたが、御当家には智仁勇の三人の家来があるとよ、渡邊織江《わたなべおりえ》さんという方は慈悲深い人だから是が仁で、秋月喜一郎《あきづききいちろう》かな是はえら剛《きつ》い人で勇よ、えゝ何とか云いッけ……戸村主水《と
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