むらもんど》とかいう人は智慧があると云いやした、此者《これ》が羽振の宜《い》い処だ、其の人らの云う事は殿様も聴くだ、御家来に失策《しくじり》が有っても、渡邊さんや秋月さんが取做《とりな》すと殿様も赦《ゆる》すだ、秋月さんは槍奉行を勤めているが、成程|剛《つよ》そうだ、身丈《せい》が高くってよ」
と手真似をして物語る内、大藏は掌《てのひら》の底に目を附けました。
十一
大「足下《そっか》掌《て》を何うした、穴が開いているようだが」
權「これか、是は殿様が槍を突掛《つッか》けて掌《て》で受けるか何うだと云うから、受けなくってというので、掌で受けたゞ」
大「むゝ、そうか、そして御家来の中《うち》仁は渡邊織江、勇は秋月、智は戸村、成程斯ういう事は珍らしいから書付けて往《ゆ》きましょう」
と細かに書いて暇乞《いとまごい》を致し、帰る時に權六が門まで送り出してまいりますと、お役所から帰る渡邊に出会いましたから、權六も挨拶する事ぐらいのことは心得て居りますから、丁寧に挨拶する。渡邊も答礼して行過《ゆきす》ぎるを見済《みすま》して、
大「彼《あれ》は」
權「彼《あれ》が渡邊織江
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