か》に物を心得んとは申しながら、余りと申せば乱暴狼藉」
 と立ちかゝるを、殿様は押されながら、
殿「いやなに惣江、手出しをする事は必ずならんぞ、權六放してくれ、あ痛い、放せ、予が悪かった、宥せ/\」
權「宥せと云って敵じゃア許せねえけれども、先《ま》ず仕方話だから許します、さ何うだね」
殿「ハッ/\」
 と殿様は稍《ようや》く起上りましたが、血だらけでございます。是は權六の血だらけの手で押付けられたから、顔から胸から血だらけで、これを見ると御家来が驚きまして、呆れて口が利けません。
殿「ハッ/\、至極|道理《もっとも》だ」
權「道理だって、私《わし》が何も手出し仕たじゃアねえのに、押《おせ》えるの斬るのと此処にいる人が云うなア分んねえ、咎《とが》も報いも無《ね》えものを殿様が手出しいして、槍で突殺《つッころ》すと云うだから、敵が然うしたら斯うだと仕方話いしてお目に掛けたゞ、敵なら捻り殺すだが、仕方話で、ちょっくら此の位《くれえ》なものさ」
殿「至極|正道《しょうどう》潔白な奴じゃ、勇気なものじゃ、何と申しても宜しい、予に悪い事があったら一々諫言をしてくれ、今日《きょう》より意見番じゃ、
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