打殺《ぶちころ》してやるだ、其の内に尊公を助けて逃がすだけの仕事よ」
殿「うん成程、立派な事だ、併《しか》し然う甘《うま》く口でいう通りに行《ゆ》くかな」
權「屹度《きっと》行《や》ります、其処は主《しゅう》家来の情合だからね」
殿「うん面白い奴じゃ、然《しか》らば敵が若し斯様に致したら何うする」
とすっと立ち上って、欄間に掛けて有りました九尺|柄《え》の大身《おおみ》の槍を取って、スッ/\と二三度しごいて、
「斯様に突き掛けたら何う致す」
と真に突いて蒐《かゝ》った時に權六が、
權「然うすれば斯う致します」
と少しも動かずに、ジリ/\と殿様の前へ進むという正直律義の人でございます。
十
粂野紋之丞前次と仰しゃる方は、未だお部屋住では有りますが、勇気の優れた方で、活溌なり学問もあり、実に文武兼備と講釈師なら誉《ほめ》る立派な殿様でございますなれども、そこはお大名の疳癪で、甚《ひど》く逆らって参ると、直《すぐ》に抜打《ぬきうち》に御家来の首がコロリなどゝいう事が有るもので、只今の華族さまは開《ひら》けて在《いら》っしゃいますから、其様《そん》な野蛮な刄物三昧《
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