ことが有ったら其の方|諫言《かんげん》を致せ、是が君臣の道じゃ、宜しい、許すから居てくれ」
權「尊公《あんた》がそれせえ御承知なら居ります」
殿「早速の承知で過分に思う、併し其の方は剣道も心得ず、文字《もんじ》も知らんで、予の側に居《お》るのは、何を以て君臣の道を立て奉公を致す心得じゃ」
權「他に心得はねえが、夜夜中《よるよなか》乱暴な奴が入《へえ》るとなりませんから、私《わし》ゃア寝ずに御殿の周囲《まわり》を内証《ないしょう》で見廻っていますよ、もし狐でも出れば打殺《ぶっころ》そうと思ってます」
殿「うん、じゃが戦国の世になって戦争の起った時に、若《も》し味方の者が追々敗走して敵兵が旗下《はたもと》まで切込んでまいり、敵兵が予に槍でも向けた時は何う致す」
權「然うさね、其処《そこ》が大切だ」
殿「さ何う致して予を助ける」
權「そりゃア尊公《あんた》どうも此処に一つ」
と權六は胸をたゝき、
「忠義という刄物が有るから、剣術は知らねえでも義という鎧を着ているから、敵が槍で尊公に突掛《つきか》けて参《めえ》れば、私《わし》ア掌《て》で受けるだ、一本脇腹へ突込まして、敵を捻《ひね》り倒して
前へ
次へ
全470ページ中76ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング