じ》なお人で、私は家来《けらい》でござえますから、永らく居る内にはお互《たげ》えに心安立《こゝろやすだ》てが出て来るだ」
富「これ/\心安立てという事がありますか」
權「するとお大名《でえみょう》は誠に疳癪持だ」
富「これ/\」
殿「富彌又口を出すか、宜しい、控えよ、実に大名は疳癪持だ、疳癪がある、それから」
權「殿様に我儘が起《おこ》れば、私《わし》にも疳癪が有りますから、主人に間違った事を云われると、ついそれから仲が悪くなります、時々逢うようにすれば、人は何となく懐かしいもので、あゝ会いたかった、宜く来たと互《たげ》えに大騒ぎをやるが、毎日《めえにち》傍にいると、私が殿様の疳癪をうん/\と気に障らねえように聞いていると、私が胡麻摺になり、※[#「言+滔のつくり」、第4水準2−88−72]諛《へつれえ》になっていけねえ、此処にいる人に偶《たま》には些《ちっ》とぐれえ腹の立つ事があっても、主人だから仕方がねえと諦め、御前さまとか御飯《おまんま》とかいう事になって、実の所をいうと然ういう人は横着者だね」
殿「成程左様じゃ、至極左様じゃ、正道《せいどう》潔白な事じゃ、これ權六、以来予に悪い
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