「居《お》られんという事は有りません、御無礼至極じゃアないか」
權「御無礼至極だって居《い》られませんよ」
殿「マ富彌控えて居れ、然う一々小言を申すな、面白い奴じゃ」
權「私《わし》ア素《もと》米搗《こめつき》で何《なん》も知んねえ人間で、剣術も知んねえし、学問もした事アねえから何うにも斯うにもお侍《さむれえ》には成れねえ人間さ、力はえらく有りますが、何でも召抱えてえと御領主さまが云うのを、無理に断れば親や女房に難儀が掛るというから、そりゃア困るが、これ/\で宜くばと己《おら》がいうと、それで宜《い》いから来いと云われ、それから参《めえ》っただねお前《めえ》さま…」
富彌ははら/\いたしまして、
富「お前《めえ》さまということは有りませんよ、御前様《ごぜんさま》と云いなさい」
權「なに御前と云うのだえ、飯だの御膳だのって何方《どっち》でも宜《い》いじゃアないか」
殿「これ富彌止めるな、宜しいよ、お前《まえ》も御前も同じことじゃのう」
權「然うかね、其様な事は存じませんよ、それから私《わし》が此処《こゝ》の家来《けれえ》になっただね、して見るとお前様《めえさま》、私のためには大事《でえ
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