昔の勇士のようであるな」
權「へえー、なんですと」
殿「古《いにしえ》の英雄加藤清正とも黒田長政とも云うべき人物じゃ、どうも顔が違うのう」
權「へえーどうも誠に違います」
富「誠に違いますなんて、自分の事を其様な事を云うもんじゃア有りませんよ」
殿「これ/\小声で然《そ》うぐず/\云わんが宜《よ》い」
權「衆人《みんな》が然う云います、へえ嚊《かゝあ》は誠に器量が美《い》いって」
富「これ/\家内の事はお尋ねがないから云わんでも宜《よ》い」
權「だって話の序《ついで》だから云いました」
富「話の序という事がありますか」
殿「其の方|生国《しょうこく》は何処《どこ》じゃ、美作ではないという事を聞いたが、左様《さよう》か」
權「何でごぜえます」
殿「生国」
權「はてな……何ですか、あの勝山在にいる医者の木村章國《きむらしょうこく》でがすか」
殿「左様ではない、生れは何処だと申すのじゃ」
權「生れは忍の行田でごぜえますが、少《ちい》せえ時分に両親が死んだゞね、それから仕様がなくって親戚《みより》頼りも無《ね》えもんでがすが、懇意な者が引張《ひっぱ》ってくれべえと、引張られて美作国《みまさかの
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