った時に始めて首を上げて、殿様のお顔をしげ/″\見るのだが、粗※[#「勹<夕」、第3水準1−14−76]《ぞんざい》にしてはなりませんよ」
權「そんならば私《わし》を呼ばねえば宜《い》いんだ」
富「さ、私《わし》の尻に尾付《くッつ》いてまいるのだよ曲ったら構わずに……然《そ》う其方《そっち》をきょと/\見て居ちゃアいかん、あ痛い、何だって私の尻へ咬付《くいつ》いたんだ」
權「だってお前《めえ》さん尻へ咬付《くッつ》けって」
富「困りますなア」
と小声にて小言を云いながら御前へ出ました。富彌は慇懃に両手を突き、一礼して、
富「へい、お召に依って權六|罷出《まかりで》ました、お目見え仰付けられ、權六身に取りまして此の上なく大悦《たいえつ》仕《つかまつ》り、有難く御礼《おんれい》申上げ奉ります」
殿「うん權六、もっと進め/\」
と云いながら見ると、肩巾の広い、筋骨の逞《たくま》しい、色が真黒《まっくろ》で、毛むくじゃらでございます。実に鍾馗《しょうき》さまか北海道のアイノ人《じん》が出たような様子で有ります。前次公は見たばかりで大層御意に入りました。
殿「どうも骨格が違うの、是は妙だ、權
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