ず高持《たかもち》に成りました事で、毎日棒を持って歩きますが、一体勉強家でございまして、少しも役目に怠りはございません、誠に宜く働き、人足へも手当をして、骨の折れる仕事は自分が手伝いを致して居りました。此の事が御重役|秋月喜一郎《あきづききいちろう》というお方の耳に入りどうか權六を江戸屋敷へ差出して、江戸詰の者に見せて、惰《なま》け者の見手本《みでほん》にしたいと窃《ひそ》かに心配をいたして居ります。
九
粂野美作守さまの御舎弟に紋之丞前次《もんのじょうちかつぐ》さまと云うが有りまして、当時《そのころ》美作守さまは御病身ゆえ御控えに成って入らっしゃるが、前《ぜん》殿さまの御秘蔵の若様でありましたから、御次男でも中々羽振りは宜うございますが、誠に武張ったお方ゆえ武芸に達しておられますので、馬を能《よ》く乗るとか、槍を能く使うとか云う者があると、近付けてお側を放しません。所で件《くだん》の權六の事がお耳に入りますと、其の者を予が傍《そば》へ置きたいとの御意ゆえ、お附の衆から老臣へ申し立て、上《かみ》へも言上《ごんじょう》になると、苦しゅうないとの御沙汰《ごさた》で、至
前へ
次へ
全470ページ中66ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング