からね」
作「其様《そんな》ことを云っては困る、是非承知して貰いたい」
權「兎に角母にも相談しましょう、お千代は否《いや》と云いますめえが、お母《ふくろ》も有りますし、年い老《と》っているから、貴方《あんた》から安心の往《い》くように話さんじゃア承知をしません、だから其の前に私《わし》がお役人さまにも会って、是れだけの者だがそれで勤まる訳なら勤めますとお前さまも立会って証人に成って、三人|鼎足《みつがなわ》で緩《ゆっ》くら話しをした上にしましょう」
作「鼎足という事はありませんよ、宜しい、それではお母《ふくろ》には私《わし》が話そうから、直《すぐ》に呼んだら宜かろう」
 とこれから母を呼んで段々話をしましたが、もと遠山龜右衛門という立派な侍の御新造に娘ゆえ大いに悦び、
母「お屋敷へお抱えに成るとは此の上ない結構な事で」
 と早速承知を致しましたので、是れからお抱えに成りましたが、私《わたくし》は頓と心得ませんが、棒を持って見廻って歩き、大した高ではございません、十石三人扶持、御作事方|賄《まかな》い役と申し、少禄では有りますが、段々それから昇進致す事になるので、僅《わずか》でも先《ま》
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