今首を打斬《ぶっき》られても名僧智識の引導より有難く受けます、何卒《どうぞ》お願《ねげ》えでごぜえますから私《わし》が首を……」
作「どう致して、手前は世の中の宝だ、まゝ此処《これ》へ昇《あが》ってくれ」
 と是れから無理やりに權六の手を把《と》って、泥だらけの足のまゝ畳の上へ上げ、段々お千代|母子《おやこ》にも詫びまして、百両(此の時《ころ》だから大したもので)取り出して台に載せ、
作「何卒《どうぞ》此の事を世間へ言わんよう、内聞にしてくれ」
 と云うと、母子《おやこ》とも堅いから金を受けません、それでは困ると云うと。
權「そんなら私《わし》が志《こゝろざ》しが有りますから、此のお金をお貰い申し、昨年から引続きまして、当御領地の勝山、津山、東山村の辺は一体に不作でごぜえまして、百姓も大分《だいぶ》困っている様子でございますから、何うか施しを出したいものでがす、それに此の皿のために指を切られたり、中には死んだ者も有りましょうから、どうか本山寺様で施餓鬼《せがき》を致し、乞食《こつじき》に施行《せぎょう》を出したいと思います」
作「あゝ、それは感心な事で、入費の処は私《わし》も出そう」

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