ない、私《わし》が生きては居《い》られん、お千代親子の者へ対しても面目ないから、私が死にます」
と慌《あわ》てゝ短刀を引き抜き自害をしようとするから、權六が驚いて止めました。
八
權六は長助の顔を視《み》つめまして、
權「貴方《あんた》何をなさりやアす」
長「いや面目ないが、実は此の皿を毀したのはお父様《とっさま》、此の長助でございます」
作「なに……」
長「唯今此の權六に当付けられ、実に其の時は赤面致しましたけれども、誰《たれ》も他に知る気遣いは有るまいと思いましたが、実はお千代に恋慕を云いかけたを恥《はじ》しめられた恋の意趣《いし》、お千代の顔に疵を付け、他《た》へ縁付《えんづき》の出来ぬようにと存じまして、家の宝を自分で毀し、其の罪を千代に塗付けようとした浅ましい心の迷い、それを權六が存じて居りながら、罪を自分の身に引受けて衆人《しゅうじん》を助けようという心底、実に感心致しました、それに引換え私《わたくし》の悪心面目もない事でございますから……」
作「暫く待て/\」
權「若旦那様、まゝお待ちなせえまし、貴方《あんた》が然《そ》う仰しゃって下されば、權六は
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