て暫く考え、
作「いや權六許してくれ、どうも実に面目次第もない、能《よ》く毀してくれた、あゝ辱《かたじ》けない、真実な者じゃ、なアる程左様……これは先祖が斯様な事を書遺《かきのこ》しておいたので、私《わし》の祖父《じゞい》より親父も守り、幾代となく守り来《きた》っていて、中指を切られた者が既に幾人《いくたり》有ったか知れん、誠に何とも、ハヤ面目次第もない、權六|其方《そなた》が無ければ末世末代東山の家名は素《もと》より、其方の云う通り慈昭院《じしょういん》殿(東山義政公の法名)を汚す不忠不義になる所であった、あゝ誠に辱ない、許してくれ、權六此の通り……作左衞門両手を突いて詫るぞ、宜くマ思い切って命を棄て、私の家名を汚さんよう、衆人《ひと》に代って斬られようという其の志、実に此の上もない感服のことだ、あゝ恥入った、実に我が先祖は白痴《たわけ》だ、斯様な事を書遺すというは、許せ/\」
と縁先へ両手をついて詫びますと、傍に聞いて居りました忰の長助が、何と思ったかポロリと膝へ涙を落して、權六の傍へ這ってまいりました。
長「權六、あゝー誠に面目次第もない、中々|其方《そなた》を殺すどころじゃア
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