お名前までも汚《けが》すような事になって、貴方《あんた》は済むめえかと考《かんげ》えますが、何卒《どうか》して此の風儀を止めさせてえと思っても、他に工夫が無《ね》えから、寧《いっ》そ禍《わざわい》の根を絶とうと打砕《ぶっくだ》いてしまっただ、私一人死んで二十人助かれば本望でがす、私も若《わけ》え時分には、心得違《こころえちげ》えもエラ有りましたが、漸《よ、や》く此の頃|本山寺《ほんざんじ》さまへ行って、お説法を聞いて、此の頃少し心も直って参《めえ》りましたから、大勢の人に代って私一人死にます、どうか其の代り、お千代さんを助けてやって下せえまし、親孝行な此様《こん》な人は国の宝で土塊《つちッころ》とは違います、さ私を斬って下せえまし、親戚《みより》兄弟親も何も無《ね》え身の上だから、別に心を置く事もありません、さ、斬っておくんなせえまし」
 と沓脱石《くつぬぎいし》へピッタリ腰をかけ、領《えり》の毛を掻上げて合掌を組み、首を差伸ばしまして、口の中で、
權「南無阿弥陀仏/\/\/\/\/\/\」
 斯《かゝ》る殊勝《しゅしょう》の体《てい》を見て、作左衞門は始めて夢の覚めたように、茫然とし
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