せるように、御先祖さまが遺言状《かきつけ》を遺《のこ》したアだね、然うじゃアごぜえませんか、乃《そこ》でどうも私も奉公して居《い》るから、人に主人の事を悪党だ非道だと謂われゝば余《あん》まり快くもごぜえません、御先祖さまの遺言が有るから、貴方はそれを守り抜いてゝ、証文を取って奉公させると、中には又喰うや喰わずで仕様がねえ、なに指ぐらい打切《ぶちき》られたって、高《たけ》え給金を取って命い継《つな》ごう、なに指い切ったってはア命には障らねえからって、得心して奉公に来て、つい粗相で皿を打毀《ぶちこわ》すと、親から貰った大切《でえじ》な身体に疵うつけて、不具《かたわ》になるものが有るでがす、実にはア情《なさけ》ねえ訳だね、それも皆《みん》な此の皿の科《とが》で、此の皿の在《あ》る中《うち》は末代までも止まねえ、此の皿さえ無ければ宜《い》いと私は考えまして、疾《とう》から心配《しんぺえ》していました、所で聞けば、お千代どんは齢《とし》もいかないのに母《かゝ》さまが塩梅《あんばい》が悪《わり》いって、良《い》い薬を飲まねば癒らない、どうか母さまを助けたい、仮令《たとえ》指を切られるまでも奉公して
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