相で毀したからとって、此の大事《でえじ》な人間の指い切るの、足い切るのと云って人を不具《かたわ》にするような御遺言状《おかきもの》を遺《のこ》したという御先祖さまが、如何《いか》にも馬鹿気た訳だ」
作「黙れ、先祖の事を悪口《あっこう》申し、尚更棄置かんぞ」
權「いや棄置かねえでも構わねえ、素《もと》より斬られる覚悟だから、併《しか》し私《わし》だって斬られめえと思えば、あんた方親子二人がゝりで斬ると云っても、指でも附けさせるもんじゃアねえ、大《でっ》けい膂力《ちから》が有るが、御当家《こちら》へ米搗奉公をしていて、私ア何も知んねえ在郷《ざいご》もんで、何の弁別《わきめえ》も有りやしねえが、村の神主さまのお説教を聴きに行《ゆ》くと、人は天《あめ》が下の霊物《みたまもの》で、万物の長だ、是れより尊《とうと》いものは無い、有情物《いきあるもの》の主宰《つかさ》だてえから、先《ま》ず禁裏さまが出来ても、お政治をなさる公方様が出来ても、此の美作一国の御領主さまが出来やしても、勝山さまでも津山さまでも、皆人間が御政治《ごせいじ》を執《と》るのかと私は考《かんげ》えます、皿が政治を執ったてえ話は昔か
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