いるじゃアないか、仮令《たとえ》気違でも此の儘には棄置かんぞ」
權「はい、私《わし》ア気も違いません、素《もと》より貴方《あんた》さまに斬られて死ぬ覚悟で、承知して大事《でえじ》のお皿を悉皆《みんな》打毀《ぶちこわ》しました、もし旦那さま、私ア生国《もと》は忍《おし》の行田《ぎょうだ》の在で生れた者でありやすが、少《ちい》さい時分に両親《ふたおや》が亡《なく》なってしまい、知る人に連れられて此の美作国《みまさかのくに》へ参《めえ》って、何処《どこ》と云って身も定まりやしねえで居ましたが、縁有って五年|前《あと》当家《こゝ》へ奉公に参《めえ》りまして、長《なげ》え間お世話になり、高《たけ》え給金も戴きました、お側にいて見れば、誠にどうも旦那さまは衆人《ひと》にも目をかけ行届きも能く、どうも結構な旦那さまだが、此の二十枚の皿が此処《こゝ》の家《うち》の害《げえ》だ、いや腹アお立ちなさるな、私は逃匿《にげかく》れはしねえ、素《もと》より斬られる覚悟でした事だが、旦那さま、あんた此の皿はまア何で出来たものと思召《おぼしめ》します、私ア土塊《つちっころ》で出来たものと考《かんげ》えます、それを粗
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