じゃく》として居りますから、作左衞門は太《ひど》く憤《おこ》りまして、顔の色は変り、唇をぶる/\顫《ふる》わし、疳癖《かんぺき》が高ぶって物も云われん様子で、
作「これ權六、どうも怪《け》しからん奴だて手前は何か気でも違ったか、狂気致したに相違ない、此皿《これ》は一枚|毀《こわ》してさえも指一本を切るという大切な品を、二拾枚|一時《いちじ》に砕くというのは実に怪しからん奴だ、さ何ういう心得か、御先祖の御遺言状《おかきもの》に対しても棄置かれん、只今此の処に於いて其の方の首を斬るから左様心得ろ、權六を取遁《とりにが》すな」
 と烈《はげ》しき下知に致方《いたしかた》なく、家の下僕《おとこ》たちがばら/\/\と權六の傍へ来て見ますと、權六は少しも驚く気色もなく、縁側へどっさりと腰を掛けまして作左衞門の顔をしげ/\と見て居りましたが、
權「旦那さま、貴方《あんた》は実にお気の毒さまでごぜえます」
作「なに……いよ/\此奴《こやつ》は狂気致して居《お》る、手前気の毒ということを存じて居《お》るかい、此の皿を二十枚砕くと云うのは……予《かね》て御先祖よりの御遺言状《おかきもの》の事も少しは聞いて
前へ 次へ
全470ページ中49ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング