げ、さくーりっと力に任せて箱諸共に打砕いたから、皿が微塵に砕けた時には、東山作左衞門は驚きました。其処《そこ》に居りました者は皆顔を見合せ、呆気《あっけ》に取られて物をも云わず、
一同「むむう……」
作左衞門は憤《おこ》ったの憤らないのでは有りません。突然《いきなり》刀掛に掛けて置いた大刀を提《ひっさ》げて顔の色を変え、
作「不埓至極の奴だ、汝《おのれ》気が違ったか、飛んだ奴だ、一枚毀してさえ指一本切るというに、二十枚箱諸共に打砕《うちくだ》くとは……よし、さ己が首を斬るから覚悟をしろ」
と詰寄せました。權六は少しも憶する気色《けしき》もなく、縁側へどっさり腰をかけ、襟を広げて首を差し伸べ、
權「さ斬って下せえ、だが一通り申上げねばなんねえ事があるから、是れだけ聞いて下せえ、逃げも隠れもしねえ、私《わし》ゃア米搗の權六でござえます、貴方《あんた》斬るのは造作もねえが、一言《いちごん》云って死にてえことがある」
と申しました。
七
さて權六という米搗《こめつき》が、東山家に数代伝わるところの重宝《じゅうほう》白菊の皿を箱ぐるみ搗摧《つきくだ》きながら、自若《じ
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