《めんしょく》を変え、容《かたち》を正して声を張上げ。
數「黙れ……白々しい事を申すな、松蔭手前はそれ程御舎弟紋之丞様を大切に心得て居《お》るならば、何故《なぜ》飴屋の源兵衞を頼んだ」
大「はっ」
數「神原五郎治、四郎治と同意致して、殿を蔑《ないがし》ろにする事を私《わし》が知らんと思うて居《お》るか、白痴《たわけ》め、左様に人前《ひとまえ》を作り忠義立を申してもな、其の方は大恩人の渡邊織江を谷中瑞麟寺脇の細道において、手槍をもって突殺した事を存じて居《お》るぞ、其の咎《とが》を梅三郎に負わそうと存じて、証拠の物を取置き、其の上ならず御舎弟様を害そうと致した事も存じて居《お》る、百八十余里|隔《へだ》った国にいても此の福原數馬は能《よ》く心得て居《お》るぞ、人非人《にんぴにん》め」
 と云い放たれ、恟《びっく》り致したが、そこは悪党でございますから、じりゝと前へ膝を進めて顔色《がんしょく》を変え。
大「御家老さま怪《け》しからん事を仰せられます、思い掛けない事を仰せられまする……手前が何で渡邊織江を殺害《せつがい》し、殊《こと》に御舎弟紋之丞さまを失おうとしたなどと誰が左様な事を申しま
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