した、手前に於《おい》ては毛頭覚えはございません、何を証拠に左様なことを仰しゃいますか、承わりとうござる」
數「これ、まだ其様《そん》なことを云うか、手前は五分試《ごぶだめ》しにもせにアならん奴だ、うゝん……よく考えて見よ、先《まず》奥方さま御死去になってから、お秋の方の気儘《きまゝ》気随《きずい》神原兄弟や手前達を引入れ、殿様を蔑《ないがしろ》にいたす事も皆《み》な存じて居《お》る。殊に其の方を世話いたした渡邊を殺害《せつがい》致したり、もと何処《どこ》の者か訳も分らん者を渡邊が格別|取做《とりなし》を申したから、お抱えになったのじゃ、上《かみ》へ諂《へつら》い媚《こび》を献じて、とうとう寺島主水を説伏せ、江戸家老を欺き遂《おわ》せて、菊様を世に出そうが為、御舎弟様を亡《な》き者にしようと云う事は、疾《と》うに忠心の者が一々国表へ知らせたゆえに、老体なれども此の度《たび》態々《わざ/\》出て参ったのだ、其の方のような悪人は年を老《と》っても人指《ひとさしゆび》と拇指《おやゆび》で捻《ひね》り殺すぐらいの事は心得て居《お》る、さアそれとも言訳があるか、忠義に凝《こ》った若者らは不忠不義
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