じゃ、斯ういう清々《せい/\》とした処を見るが何よりの楽しみじゃの」
大藏は座を進ませまして、
大「えゝどうも今日《こんにち》は何もお慰《なぐさ》みもなく、お叱りを受けるかは存じませんが、亭主が深川の芸者を呼び置きましたと申すことで、一寸《ちょっと》お酌を取りましても、武骨な松蔭や秋田屋がお酌をいたしましては、池田伊丹の銘酒も地酒程にも飲めんようなことで、甚だ御無礼ではございますが、お目通りへ其の深川の芸者どもを呼寄せることに致します」
數「おゝ成程その噂は聞いている、深川には大分美人も居《お》り、芸の好《よ》いものも居《お》るという事だが、それは宜《よ》いの、手前は芸者に逢った事はない、武骨者で殊《こと》に岩越という男が是非一緒に往《ゆ》きたい、何でも連れてってくれ、未《いま》だ碌に御府内を見たことが無いというから同道して来たが、起倒流《きとうりゅう》の奥儀を究《きわ》めあるだけあって、膂力《ちから》が強いばかりで、頓と風流気《ふうりゅうぎ》のない武骨者じゃ」
岩越「えゝ拙者は岩越|賢藏《けんぞう》と申す至って武骨者で此の後《ご》ともお見知り置かれて御別懇に」
大「今日《こんにち》
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