は有りませんが、御家老へ此の向うから月の上《あが》ります景色を………これは御馳走でございます、求めず天然の楽《たのし》みで、幸い今宵は満月の前夜で」
數「おゝ成程な、いやかけ違って染々《しみ/″\》挨拶もしなかったが、段々と上屋敷の事も下屋敷の事も、貴公が大分に骨を折って大きに殿様にも格別に思召《おぼしめ》し、新参でありながら、存外の昇進で、えらいものだ」
大「えへゝゝ、不束《ふつゝか》の大藏格別|上《かみ》のお思召《ぼしめ》しをもちまして、重きお役を仰付けられ、冥加至極の儀で、此の上とも何卒《どうぞ》御家老のお引立を蒙《こうむ》りたく存じます」
數「其様《そん》なに出世をしては往《ゆ》く処があるまい、中々どうして男は好《よ》し、弁に愛敬を持ち、武芸も達しておるから自然と昇進をする質《たち》だ」
大「えゝ、恐入りました事で」
數「手前も壮年の折柄《おりから》は一体虚弱だが、大きに老年に及んで丈夫になったが、どうも歯が悪くなって、旨い物を喰《た》べても余り旨いとは思わん、楽しみと云っても別になし、国に居《お》れば田舎侍だから美食美服は出来んばかりでは無い、一体若い時分からそういう事は嫌い
前へ
次へ
全470ページ中447ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング