を沢山所持して居《お》る様子でございます、今日《こんにち》は御家老のお入来《いで》だと、何か大切な品を取出した様子で、なに碌《ろく》なものもございますまいがほんの有合《ありあい》で」
數「いや中々|好《よ》い茶碗だ」
大「えゝ道具は麁末《そまつ》でござるが、主人が心入れで、自ら隅田川の水底《みずそこ》の水を汲上げ、砂漉《すなごし》にかけ、水を柔《やわら》かにして好《よ》い茶を入れましたそうで」
數「成程それは有難い、其処《そこ》が親切というもので、茶はたとえ番茶でも水を柔かにして飲ませる積りで、自身に川中まで船で水を汲みに往《ゆ》く志というものは、千万|金《きん》にも替えがたく好い茶を飲ませるより福原|辱《かたじけ》なく飲む」
大「えゝ恐入りました事で」
數「大藏、立派な菓子を取ったの」
大「いえ、どうも甚《はなは》だ何もございませんで、此の辺は誠にどうも……市ヶ谷から此処《これ》へ出張《でば》りますことで、好《い》い道具や何かは皆|此方《こちら》の蔵へ入れ置きますという事で」
數「成程、火事がないから道具の好《よ》いのを運んで置くか、それは宜かろう」
大「今日《こんにち》は何も御馳走
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