罪を負わせ、然《そ》うして他へ嫁に往《ゆ》く邪魔に成るようにお千代の顔へ疵を附けようとする悪策《わるだくみ》を權六が其の通りの事を申しましたから、長助は変に思いまして、
長「手前は全く千代に惚れたか」
權「え、惚れましたが、云う事を肯《き》かねえから可愛さ余って憎さが百倍、嫁に行く邪魔をして呉れようと、九月のお節句にはお道具が出るから、其の時皿を打毀《うちこわ》して指を切り不具《かたわ》にして生涯亭主の持てねえようにして遣《や》ろうと、貴方《あなた》の前だが考えを起しまして、皿検《さらあらた》めの時に箱の棧が剥《と》れたてえから、糊でもって貼《つ》けてやる振をして、下の皿を一枚《いちめえ》毀して置いたから、先《ま》ず恋の意趣晴しをして嬉しいと思い、実は土間で腕を組んで悦んでいると、此の母《かゝ》さまが飛んで来て、私《わし》が病苦を助けてえと危《あぶね》え奉公と知りながら参って、人参とかを飲まそうと親のために指を切られるのも覚悟で奉公に来たアから、代りに私《わし》を殺して下せえ、切って下せえと子を思うお母《ふくろ》の心も、親を助けてえというお千代の孝行も、聴けば聴く程、あゝー実に私《わし
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