場《はしば》にあります。庭が結構で、座敷も好《よ》く出来て居ります。これへ連出し馳走というので川口から立派な仕出しを入れて、其の頃の深川の芸者を二十人ばかり呼んで、格別の饗応になると云うのであります。

        四十六

 時は八月十四日のことで、橋場の秋田屋の寮へ国家老の福原數馬という人を招きまして何ぞ隙《すき》があったらば……という松蔭が企《たく》み、濱名左傳次という者と諜《しめ》し合せ、更《ふ》けて遅く帰るようで有ったらば隙を覗《うかゞ》って打果してしまうか、或《あるい》は旨く此方《こちら》へ引入れて、家老ぐるみ抱込んでしまうかと申す目論見《もくろみ》でございます。大藏は悪才には長《た》け弁も能《よ》し愛敬のある男で、秋田屋に頼んで十分の手当でございます。此の寮も大して広い家《うち》ではございませんが客席が十五畳、次が十畳になって、入側《いりかわ》も附いて居り誠に立派な住居《すまい》でございます。普請は木口《きぐち》を選んで贅沢《ぜいたく》なことで建てゝから五年も経《た》ったろうという好《よ》い時代で、落着いて、なか/\席の工合《ぐあい》も宜しく、床《とこ》は九尺床でござ
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