なれば、目付も少し困って、其の返答に差支《さしつか》えた様子であります。
目「むゝう、權六の申す所一応は道理じゃが、殿様より遠慮を仰せ出《いだ》された身分で見れば、それを背《そむ》いてはならん、最も外出致すを遠慮せんければならん」
權「外出《がいしつ》だって我儘に旨《うめ》え物を喰いに往《ゆ》くとか、面白いものを見に往《い》くのなれば遠慮ういたしますが、殿様のお側を守るなア遠慮は出来ねえ、外出《がいしつ》するなって其様《そん》な殿様も無《な》えもんだ」
四「えゝ四郎治申上げますあの通り訳の分らん奴で、然《しか》るをお目付は權六のみを贔屓いたされ、勘八一人唯悪い者と仰せられては甚だ迷惑をいたします事で、殊《こと》にお目付も予《かね》てお心得でござろう、神原五郎治の家《いえ》は前《ぜん》殿様よりお声掛りのこれ有る家柄、殊に遠山權六が如き軽輩と違って重きお役をも勤める兄でござる、權六と同一には相成りません、權六は上《かみ》の仰せ出《いだ》されを破り、外出を致したをお咎めもなく、格別の思召《おぼしめし》のこれ有る所の神原五郎治へお咎めのあるとは、実に依怙《えこ》の御沙汰かと心得ます、左様な依怙
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