の事をなされては御裁許役とは申されません」
目「黙れ四郎治、不束《ふつゝか》なれども信樂豊前は目付役であるぞ、今日《こんにち》其の方らを調ぶるは深き故有っての事じゃ、此の度《たび》御出府に成られた、御国家老福原殿より別段のお頼みあって目付職を勤めるところの豊前に対して無礼の一言であるぞ」
四「ではございますが、余り片手落のお調べかと心得ます」
目「其の方は部屋住《へやずみ》の身の上で、兄の代りとはいえども、其の方から致して内庭へ這入るべき奴では無い、然《しか》るを何《な》んだ、其の方が家来に申付けて内庭を廻れと申付けたるは心得違いの儀ではないか、前《ぜん》殿様より格別のお声がゝりのある家柄、誠に辱《かたじけ》ない事と主恩《しゅおん》を弁《わきま》えて居《お》るか、四郎治」
四「はい、心得居ります」
目「黙れ、新参の松蔭大藏と其の方兄五郎治兄弟の者は心を合せて、菊之助様をお世嗣《よつぎ》にせんが為《た》めに御舎弟様を毒殺いたそうという計策《たくみ》の段々は此の方心得て居《お》るぞ」
四「むゝ」
目「けれども格別のお声がゝりもこれ有る家柄ゆえ、目付の情を以《もっ》て柔和に調べ遣《つか》わす
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