、彼は陪臣でござって、お内庭へ這入りました段は重々相済まん事なれども、五郎治から私《わたくし》が言付けられますれば、即《すなわ》ち私が、兄五郎治の代《だい》を勤むべき処、御用あって御家老からお呼出しに相成りましたから、止《や》むを得ず家来勘八に申付けましたので、取《とり》も直さず勘八は兄五郎治の代《たい》でござる、何も強《し》いて之《これ》を陪臣と仰せられては誠に夜廻りをいたし、上《かみ》を守ります所の甲斐もない事でございます、勘八のみお咎《とがめ》が有りましては偏頗《かたおとし》のお調べかと心得ます」
目「それは何ういう事か」
四「えゝ是《こ》れなる遠山權六は、当春中《とうはるじゅう》松蔭大藏の家来有助と申す者を取押えましたが、有助は何分にも怪しい事がないのを取押えられ堪《たま》り兼《かね》て逃所《にげどころ》を失い、慌《あわ》てゝ權六に斬付けたるを怪しいという処から、お調べが段々長く相成って、再度松蔭大藏もお役所へ罷出《まかりで》ました。其の折《おり》は御用多端の事で、御用の間《ま》を欠き、不取調べをいたし、左様な者を引いてまいり、上役人《かみやくにん》の迷惑に相成る事を仕出《しで
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