積《つもり》で廻るが宜《よ》いと申付けましたので、大小を差しましたる儀で、併《しか》し頭巾を被りましたことは頓《とん》と心得ません……これ勘八、手前は何故《なぜ》目深《めぶか》い頭巾で面部を包んだ、それは何ういう仔細か、顔を見せん積りか」
勘「えゝ誠にどうも夜《よ》になりますと寒うございますんで、それゆえ頭巾を被りましたんで」
目「なに寒い……当月は八月である、未《いま》だ残暑も失《うせ》せず、夜陰といえども蒸《いき》れて熱い事があるのに、手前は頭巾を被りたるは余程寒がりと見ゆるな」
勘「へえ、どうも夜《よる》は寒うございますので」
目「寒くば寒いにもせよ、一体何ういう心得で其の方が御寝所近くへ這入った、仔細があろう、如何様《いかよう》に陳じても遁《のが》れん処であるぞ、兎や角陳ずると厳しい処の責めに遇《あ》わんければならんぞ、よく考えて、迚《とて》も免《のが》れん道と心得て有体《ありてい》に申せ」
勘「有体たって、私《わたくし》は何も別に他から頼まれた訳はございませんで、へえ」
目「中々|此奴《こやつ》しぶとい奴だ、此の者を打ちませえ」
四「いや暫く……四郎治申し上げます、暫くどうぞ
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