いと申付けたに相違ござらん、然るに彼がお手飼の犬とも心得んで、吠《ほ》えられたに驚き、梅鉢を手打にいたしました段は全く彼何も弁《わきま》えん者ゆえ、斯様な事に相成ったので、兄五郎治に於《おい》ても迷惑いたします事でござる、併《しか》し何も心得ん下人《げにん》の事と思召《おぼしめ》しまして、幾重にも私が成代ってお詫を申上げます、御高免《ごこうめん》の程を願いとうござる、全く知らん事で」
目「むう、そりゃ其の方兄五郎治から言付けられて、其の方が見廻るべき所を其の方がお上屋敷へまいって居《お》る間、此の勘八に申付けたと申すのか、それは些《ち》と心得んことじゃアないか、うん、これ申付けても外庭を見廻らせるか、又はお馬場口を見廻るが当然、陪臣の身分で御寝所近い奥庭まで夜廻りに這入れと申付けたるは、些と訝《おか》しいようだ、左様な事ぐらいは弁《わきま》えのない其の方でもあるまい、殊《こと》に又帯刀をさせ面部を包ませたるは何う云う次第か」
四「それは夜陰《やいん》の儀でござるで、誠にお馬場口や何か淋しくてならんから、彼に見廻りを申付ける折《おり》に、大小を拝借致したいと申すから、それでは己《おれ》の
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