「何故毒になる、若《も》し毒になるなら、水飴を上げても咳の助けには相成らん、却《かえ》って悪いから止《よ》せと何故止めん」
富「左様な事を口でぐず/\申している内には召上ってしまいます、召上っては大変と存じまして、お庭へ投棄てました」
紋「余程変じゃ…」
富「先《まず》ま外村氏安心致しました」
外「安心じゃアない、粗忽《そこつ》千万な事じゃないか、手前は只驚いて何とも申上げ様がない、お上屋敷から下すったものを無闇にお庭へ投棄てるというは何ういう心得違いで」
紋「外村彼是云うな、此奴は君臣の道を弁《わきま》えんからの事じゃ、予を嘲弄《ちょうろう》致すな、年若の主人と侮《あなど》り何《ど》の様《よう》な事を致しても宜しいと存じておるか、幼年の時から予の側近く居《お》るによって、いまだに予を子供のように思って馬鹿に致すな」
富「いえ、中々もちまして」
紋「いや容赦《ようしゃ》は出来ん、棄置かれん、今日《こんにち》の挙動《ふるまい》は容易ならんことじゃ」
富「お棄置きに成らんければお手打になさいますか」
紋「尤《もっと》も左様」
富「私《わたくし》も素《もと》より覚悟の上、お手打になりましょう
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