が附いて高台に載せてお湯が出ました。側に在《あ》ります銀の匙《さじ》を執《と》って水飴を掬《すく》おうとしたが、旨くいきません。
紋「これは思うようにいかんの」
惣「極製《ごくせい》の水飴ゆえ金属《かなもの》ではお取り悪《にく》うございます、矢張《やっぱり》木を裂《さ》いた箸が宜しいそうで」
紋「然《そ》うかの、箸を持て」
 と箸を二本|纒《まと》めて漸々《よう/\》沢山捲き上げ、老女が頻《しき》りに世話をいたして、
老「さア/\お口を」
紋「うむ」
 と今箸を取りにかゝる処へ駈込んで来たのは川添富彌、物をも云わず紋之丞様が持っていた箸を引奪《ひったく》って、突然庭へ棄てた時には老女も驚き、殿様も肝《きも》を潰《つぶ》しました。

        四十四

紋「何じゃ/\」
富「ハッ富彌で」
紋[#「紋」は底本では「富」]「白痴《たわけ》……何をいたす」
富「ハア」
 と胸を撫下《なでおろ》し、
富「誠に幸いな処へ駈付けました、どうか水飴を召上る事はお止《とゞま》りを願います、決して召上る事は相成《あいなり》ません」
老「はアどうも私《わたくし》は恟《びっく》りしました、これは何という
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