した。暫く経つと紋之丞様がばと起上って、
紋「惣衞/\」
惣衞「はア」
紋「惣衞、何は帰ったか五郎治は」
惣「えゝ慥《たし》かお次に扣《ひか》え居りましょう、上《かみ》のお使《つかい》でございますから、紅葉の方へ案内致しまして、一献出しますように膳の支度をいたして居ります」
紋「じゃが何《なん》じゃの、何故《なぜ》お兄様《あにいさま》は彼《あん》な奴を愛して側近く置くかの、彼《あれ》はいかん奴じゃ」
惣「左様な事を今日《こんにち》は御意遊ばしません方が宜しゅうございます」
紋「云っても宜しい、彼《あれ》は※[#「言+滔のつくり」、第4水準2−88−72]《へつら》い武士じゃ、佞言《ねいげん》甘くして蜜の如しで、神原|或《あるい》は寺島|等《ら》をお愛しなさるのは、勧める者が有るからじゃの、惣衞」
惣「御意にござります」
紋「心配じゃ」
惣「御病中何かと御心配なされては相成りません、程無《ほどの》うお国表から福原數馬も出仕致しますから」
紋「あゝ數馬が来たら何うか成るか、あゝ逆上《のぼ》せて来た、折角お兄様から下すった水飴、甜《な》めて見ようか」
惣「召上りませ、お湯を是へ」
 是から蓋
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