と却《かえ》って御病気に障ります、左様な心得で五郎治が申した訳ではありません」
紋「一体斯様な事をいう手前などはな主人を常《つね》思わんからだ、主人を思わん奴が偶々《たま/\》胸に主人の為になる事を浮《うか》ぶと、あゝ忠義な者じゃと自《みずか》ら誇る、家来が主人を思うは当然《あたりまえ》の事だ、常思わんから偶《たま》に主人を思う事があると、私《わし》は忠義だなどと自慢を致す、不忠者の心と引較べて左様に申す、白痴者《たわけもの》め、早々帰れ」
と以《もっ》ての外不首尾でございますから、
五「ホヽ」
と五郎治[#「五郎治」は底本では「五郎次」]は手持不沙汰で、
五「今日《こんにち》は上《かみ》の御名代として罷出《まかりで》ましたが、性来《せいらい》愚昧《ぐまい》でございまして、申上げる事も遂《つい》にお気に障り、お腹立に相成ったるかは存じませんが、偏《ひとえ》に御容赦の程を願います」
紋「退《さが》れ」
五「はっ」
老「五郎治殿御病気とは申しながら誠に御癇癖《ごかんぺき》が強く、時々斯ういうお高声があります事で、悪《あ》しからず……あなた、左様なことを御意遊ばすな、それがお悪い、お高声
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