の出るは余程せつないがの、其のせつない中《うち》にもお兄様をお案じ申上げて、予の病気は兎も角、どうか早くお兄上様の御病気御全快を蔭ながら祈り居《お》ると申せ」
五「はア、はア、そのお言葉を上《かみ》がお聞きでござったら、嘸《さぞ》お悦びでございましょう、御病苦を忘れ、只お上のことのみ思召《おぼしめ》さるゝというのは、あゝ誠にお使者に参じました五郎治|倶《とも》に辱《かたじけ》のう心得ます、只今の御一言早々帰りまして、上へ申上げるでございましょう、実に斯様な事を承わりますのは、誠に悦ばしい事で」
紋之丞殿は急に気色《けしき》を変え、声を暴《あら》らげ、
紋「五郎治、申さんでも宜しい、お兄様《あにいさま》に左様な事を申さんでも宜しい、弟が兄を思うは当前《あたりまえ》の事じゃ、お兄様も亦《また》予を思うて下さるのは何も珍らしい事はない、改めて左様申すには及ばん、然《しか》るを事珍らしく左様の事を申伝えずとも、よも斯様の事は御存じで有ろう、左様に媚※[#「言+滔のつくり」、第4水準2−88−72]《こびへつら》った事を云うな」
五「はア……誠にどうも」
老女「左様なお高声《こうせい》を遊ばす
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