ん中から奇態でございますね、何うして」
村「私にも分らんが、何ういう訳で襟の中へ……訝《おか》しいの」
定「女物の襟へ手紙を入れて置くのは訝しい訳でございますが、情夫《いろおとこ》の処へでも遣るのでございましょう」
村「だってお前それにしても襟の中へ……訝しいじゃアないか」
定「左様でございますね、開けて御覧遊ばせよ、何と書いてあるか」
村「無闇に封を切っては悪かろう」
定「これを貴方の物にして、此の手紙を開けて御覧なすって、若《も》し入用《にゅうよう》の手紙なれば先方《むこう》へ返したって宜《い》いじゃア有りませんか」
村「本当に然《そ》うだね、封が固くしてあるよ、何と書いてあるだろう」
定「お禁厭《まじない》でございますか知らん、随分お守《まもり》を襟へ縫込んで置く事がありますから、疫病除《やくびょうよけ》に」
村「父上様まいる菊よりと書いてある、親の処へやったんで」
定「だって貴方親の処へ手紙をやるのに、封じを固くして襟の中へ縫付けて置くのは訝《おか》しゅうございますね、尤《もっと》も芸者などは自分の情郎《いろおとこ》や何かを親の積りにして、世間へ知れないようにお父様《とっさま》
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